ENGINEERING & DESIGN

「SEならデザインも
できるよね?」のすれ違い

システムを作る人と、見た目や体験を設計する人。仕事は重なることもありますが、専門性も成果物も同じではありません。気持ちよく協力するための境界を考えます。

「ホームページを作れるなら、おしゃれなデザインもお願い」
「システム開発ができるなら、ゲームのキャラクターも描けるよね?」

パソコンを使う仕事は、ひとまとめに見られがちです。けれど、プログラムを書くこと、使いやすい画面を考えること、ブランドに合うビジュアルを作ることは、それぞれ別の知識や経験が必要な仕事です。

依頼を断られたことは、その人に能力がない証拠ではありません。必要な専門性や、依頼の範囲・品質・責任を確認したうえでの誠実な返答かもしれません。

もちろん、エンジニアがデザインも担当する人もいます。大事なのは職種名でできる・できないを決めつけず、何を誰に頼み、どんな成果を期待しているかを揃えることです。

DIFFERENT EXPERTISE

「作る仕事」でも、考えている対象が違う

家づくりにたとえるなら、建物の構造や設備を成立させる仕事と、空間の使い心地や見え方を整える仕事には、それぞれの専門性があります。

ENGINEERING

仕組みを設計し、動かす

要件に合わせて機能を実装し、データやサービスを連携させ、性能・安全性・保守性を確保する。システムエンジニアや開発者が主に担う領域です。

PRODUCT & UI DESIGN

使い方と画面を設計する

利用者や業務を理解し、情報の優先順位、操作の流れ、画面構成、見た目を設計する。プロダクトデザイナーやUI/UXデザイナーなどが関わります。

GRAPHIC & ILLUSTRATION

世界観や視覚表現を作る

ロゴ、イラスト、キャラクター、チラシなどを、目的や媒体に合わせて形にする。グラフィックデザイナーやイラストレーターなどの専門領域です。

職種名や担当範囲は会社・プロジェクトで異なります。ここでの区分は一般的な目安であり、ひとりが複数の役割を担うチームもあります。

WHERE THE WORK OVERLAPS

ウェブ制作では、境界を越えて一緒に作る

画面は、見た目だけでもコードだけでも完成しません。使いやすさと実現性の間を、職種をまたいで調整します。

作業中心となる専門性一緒に確認すること
目的・利用者・要件の整理企画、業務担当、プロダクト設計誰のどんな課題を解決し、何を成功とするか
情報設計・操作の流れUX・プロダクト設計、業務設計必要な情報、画面遷移、例外時の操作
画面の見た目・ブランド表現UI・ビジュアルデザインデザインの意図、実装可能性、アクセシビリティ
画面の実装・データ連携フロントエンド・バックエンド開発表示の再現性、動作、性能、保守性
確認・改善デザイン、開発、利用者、品質管理実際の使いやすさ、端末ごとの表示、修正の優先順位

画面の配色や配置をエンジニアが調整することもあれば、デザイナーが実装を理解して仕様を工夫することもあります。UI/UXは「デザイナーだけの仕事」と切り離せず、ユーザーの課題とプロジェクトの体制に応じて協力する領域です。

A REQUEST IS A SCOPE

「できますか?」の前に、依頼の中身を揃える

「ウェブサイトを作る」という一言には、実装からロゴ制作、写真撮影、文章作成まで、さまざまな作業が含まれ得ます。

相談時に決めておきたいこと

  • 何を作り、誰に届けたいか
  • 必要な成果物は何か(画面、ロゴ、イラスト、印刷データなど)
  • 参考にしたい雰囲気や、避けたい表現はあるか
  • 予算、納期、修正回数、素材の準備方法
  • 最終的な確認や利用許諾を誰が担うか

範囲が違えば、相談先も変わる

  • 機能やデータ連携を作る:システムエンジニア・開発者
  • 画面の情報や操作を整える:UI/UX・プロダクトデザイナー
  • ロゴや販促物を作る:グラフィックデザイナー
  • キャラクターや挿絵を描く:イラストレーター
  • 複数の成果物をまとめる:制作会社やアートディレクター

予算や体制によっては、一人が複数の役割を担うこともあります。その場合も、どの作業をどの品質水準で担当するか、追加の専門家が必要かを先に相談すると、期待の食い違いを減らせます。

WHEN SOMEONE SAYS NO

断られたときは、能力ではなく条件を確認する

専門外の依頼を断るのは、品質や責任を曖昧にしないための判断である場合があります。

何が難しいかを聞く

技術的に不可能なのか、経験や時間が足りないのか、依頼範囲が未確定なのか。理由が分かれば、次に取れる方法も見つけやすくなります。

得意な人につなげる

デザインやイラストは別の専門家へ依頼し、エンジニアは仕様の実現や公開に関わる。必要に応じて両者が相談できる場を作ります。

担当範囲を合意する

誰が企画、制作、実装、確認を担うのかを決めます。成果物の受け渡しや修正の担当も共有しておくと、後工程がスムーズです。

ONE PERSON, MANY SKILLS?

複数の専門性を持つ人もいる。だからこそ確認を

プログラミングもデザインも得意な人はいます。個人で企画、イラスト、音楽、プログラムまで手がけるクリエイターもいます。それは職種の境界が存在しないという意味ではなく、本人が複数の技術を身につけ、担当できる範囲を広げているということです。

「SEだからできるはず」「デザイナーだからコードも書けるはず」と決めつけるのではなく、実績、希望する品質、使える時間、契約範囲を確認する。複数の役割を一人に頼むなら、優先順位と対価も含めて合意することが大切です。

SUMMARY

専門家に、得意な仕事をつなぐ

システムエンジニアは、仕組みを設計して動かす専門家です。デザイナーやイラストレーターは、利用者の体験や視覚表現を専門に扱います。ウェブ制作のように役割が重なる場面では、互いの視点を持ち寄ることで成果物をよりよくできます。

専門外の依頼を断ることは、能力不足とは限りません。期待する成果と担当範囲を確かめ、必要な専門家へバトンを渡す。その連携が、システムもデザインも大切にした仕事につながります。