SMALL OFFICE & NETWORK DESIGN

1フロア・20人オフィスの
ネットワーク構成を考える

機器の数を先に決めるのではなく、業務、建物、運用体制に合わせて「止まりにくく、守りやすい」ネットワークを組み立てます。

オフィスの移転や刷新では、回線速度やWi-Fiの電波だけに目が向きがちです。しかし、実際に困るのは、会議中に通信が不安定になること、来客用の端末から社内の機器が見えてしまうこと、障害が起きたときに誰も復旧手順を知らないことです。

1フロア、従業員約20名、テレワーク用VPNは将来追加するかもしれない――このくらいの条件なら、まずは構成をシンプルにし、分けるべき通信だけを分離する設計から始めると検討しやすくなります。

以下は特定の製品やサービスを推奨するものではなく、機器を選ぶ前に確認したい設計のたたき台です。実際の通信量、建物の構造、契約内容、必要なセキュリティ水準によって、必要な台数や機能は変わります。

01 / A SIMPLE TOPOLOGY

まずは、配線の中心を一つにする

1フロアでは、配線の中心にルーターとスイッチを置き、そこから各機器へ枝分かれさせるスター型が管理しやすい構成です。

インターネット回線
        │
      ONU(回線終端装置)
        │ WAN
   ルーター/UTM(例:社内LANのゲートウェイ)
        │ LAN・VLAN
   管理機能付きスイッチ
    ├── Wi-Fiアクセスポイント(社内用SSID)
    ├── Wi-Fiアクセスポイント(ゲスト用SSID)
    ├── 有線PC・複合機
    └── NAS・サーバー(必要な場合)

ONUとルーターの機能が一体になっている契約もあります。二重ルーターになっていないか、IPv4・IPv6の方式、固定IPアドレスの有無、障害時の問い合わせ先を、回線事業者と機器の仕様書で確認します。

02 / EQUIPMENT

機器は「数」より、役割と余力で選ぶ

小規模オフィスの機器構成例
役割構成例選定・確認の観点
ゲートウェイルーター/UTM 1台ファイアウォール、更新提供期間、ログ、VPN、同時通信量。セキュリティ機能は製品・契約プランで異なります。
配線の集約管理機能付きスイッチ 1台ポート数に余裕を持たせ、VLAN、PoE、リンク速度、PoE給電総量、故障時の交換方法を確認します。
無線LAN法人向けAP 1〜2台Wi-Fi 6以降、同時接続数、ローミング、管理方式、電波調査。台数は壁・床面積・利用場所で変わります。
データ保管NASまたはクラウドアクセス権、暗号化、更新、復元テスト。RAIDは可用性を高めますが、バックアップの代わりにはなりません。
電源・継続運用UPS、予備機、配線ラベル停電や瞬断への備え、復旧に必要な設定情報、保守窓口と交換部品の入手性を確認します。

「同時接続50台以上」などの数値は、通信量や端末の種類を含めて検証するための目安です。台数だけで、Web会議の品質や通信の安定性が保証されるわけではありません。

03 / ADDRESSING

IPアドレスは、将来の変更も見込んで管理する

小規模なら一つの社内LANから始められますが、来客用ネットワークは別セグメントに分けます。

OFFICE

社内用

例:192.168.10.0/24。PCや業務用スマートフォンはDHCPで管理し、機器はDHCP予約または固定割り当てを使い分けます。

GUEST

来客用

例:192.168.20.0/24。インターネットだけを許可し、社内LAN、管理画面、NASへはファイアウォールで拒否します。

DEVICES

機器管理用

必要に応じて、スイッチやAPの管理画面にアクセスできる端末・経路を制限します。管理用パスワードも個別に設定します。

DOCUMENT

台帳

IP、MAC、設置場所、用途、管理者、更新期限を台帳に残します。アドレスの例は他の拠点やVPNと重複しないように決めます。

04 / WI-FI AND GUEST ACCESS

Wi-Fiは、設置場所と分離をセットで考える

APは電波調査をして設置する

天井や高い位置が常に正解とは限りません。壁、金属什器、会議室の遮蔽、隣接フロアの電波を確認し、必要なら複数台を適切に配置します。PoEは便利ですが、スイッチの給電総量とAPの消費電力が合うかを確認します。

ゲストSSIDは「名前」だけで分けない

SSIDを分けるだけでは、社内LANからの隔離を説明できません。VLAN、ルーターの通信ポリシー、APのクライアント間通信禁止、管理画面へのアクセス制限を組み合わせ、実機で社内機器へ接続できないことを確認します。

05 / SECURITY AND RECOVERY

「守る」だけでなく、戻せる状態にする

  • ルーター、スイッチ、AP、NASの管理画面をインターネットへ直接公開しない。
  • 管理者アカウントを共有せず、強いパスワードと多要素認証を使える範囲で設定する。
  • 機器のファームウェア、OS、NASアプリを、影響を確認したうえで計画的に更新する。
  • NASのRAID状態だけで安心せず、別媒体・別場所へのバックアップと復元テストを行う。
  • 停電、回線断、機器故障、ランサムウェア感染を想定し、連絡先と復旧手順を紙やオフラインでも参照できるようにする。

外部のクラウドへバックアップする場合は、保存先の契約条件、アクセス権、暗号化、保存期間、削除方法、国外移転の有無などを確認します。個人情報や機密情報を扱う場合は、社内規程や委託先との契約も合わせて確認しましょう。

06 / REMOTE VPN AS AN OPTION

VPNは、必要になってから範囲を決める

VPN機能が搭載されていても、すぐに社内の全機器へ接続させる必要はありません。

目的

社内ファイルの参照、特定の業務システムへの接続など、利用目的と対象を先に決めます。

認証

多要素認証、端末の管理、利用者ごとのアカウント、退職・異動時の停止手順を用意します。

費用と制約

VPNの方式、同時接続数、暗号方式、ライセンス、回線の上り速度、ログ保存期間は製品と契約で異なります。

VPNを有効にすると、外部からの接続経路が増えます。設定後は不要なポートや権限を残さず、ログを確認し、定期的に利用者と端末を棚卸しします。

07 / BEFORE YOU ORDER

発注前に確認したいこと

現場の確認

  • 利用人数と端末数、Web会議のピーク
  • 有線が必要な席、会議室、複合機の場所
  • 壁・金属什器・配線経路・電源の位置
  • 停止できる時間と、障害時の連絡体制

見積もりの確認

  • 機器本体だけでなく設計、配線、設定、試験、保守
  • ライセンスの更新費用とサポート期間
  • 初期パスワード変更、台帳、設定バックアップ
  • ゲスト分離、バックアップ復元、VPNを含む受入試験

IN CLOSING

小さく始め、測ってから広げる

20人規模だからといって、家庭用機器を置けば十分とも、UTMを導入すれば安全とも限りません。重要なのは、必要な通信を整理し、来客用と社内用を分け、設定と復旧方法を記録し、実際の利用状況を見ながら更新することです。

なお、天井内の配線や電源工事は、建物の管理者、賃貸借契約、消防・電気設備に関するルールの確認が必要です。工事や通信サービスの契約、個人情報の取扱いは、地域の法令や契約条件に適合するよう、必要に応じて有資格者・専門事業者・専門家へ確認してください。本稿は一般的な情報提供であり、特定の構成の安全性、性能、法令適合性を保証するものではありません。